大判例

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仙台高等裁判所 昭和29年(う)640号 判決

所論は要するに被告人が買受け及び売渡した原判示第一、第二の各うるち精米は供出の対象とならない五等級以下のいわゆる規格外の米で食糧管理法にいわゆる米穀に当らないから被告人の原判示各所為は食糧管理法に違反しないというのである。しかしながら食糧管理法による米穀の需給調整は、国内生産米については、生産者は、その生産した米穀で供出割当を受けた数量のものを政府に売渡(供出)さなければならぬこととするとともに、この供出制度を実効あらしめるために米穀の売渡其の他の譲渡の制限、買受の制限及び移動の制限等を併せ行うという方式をとつているのであつて、本件の犯行とせられる政府以外の者の生産者からの買受け、所有者の政府以外の者えの譲渡の各制限も右の趣旨に出たものに外ならない、この立法趣旨に鑑み、かつ食糧管理法が一定の品質以下の米穀をその管理の対象から除外している旨の明文を設けていないことに鑑み、食糧管理法にいうところの「米穀」中には、取引の通念上米穀とせられるものは凡べて包含されるものと解すべきである。ところで記録を精査しても本件の米(うるち精米)は農産物検査法による検査を受けたものかどうか、受けたとしても果してどんな等級のものであつたかは、全く不明で従つて本件の米が所論供出の対象にならぬものであるかどうかも明かではないばかりでなく、鎌田亀治の検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書謄本中には、原判示第一のうるち精米十五俵の中には多少二番米も混じていたが、それでも飯米には少しも差支えのないものであつた旨の供述記載があり、被告人の検察官事務取扱検察事務官に対する第一回供述調書中にも、被告人が原判示渡辺勝に売渡した米は全部うるち米で、特にいいとはいわれない米も中には少しあつたが、その悪い米でも十分食用に適する米であつた旨の供述記載があるのであつて、本件の米はすべて十分飯米に適するものであつたことは疑いなく、なお本件米の売買代金も原判示第一の被告人が鎌田亀治から買受けた値段はすべて一升百円(一俵四千円)の割合、原判示第二の被告人が渡辺勝に売渡した値段は、最初被告人が渡辺に対する借財一万円を支払う時に売渡した一石は一升百円の割合その他はすべて一升百六円二十五銭(一俵四千二百五十円)の割合であり、かつ右最初の一石は被告人が従前栄養の素なるものの製造を営業中加工委託の加工賃の代りに受取つた米で、その他はすべて、被告人が鎌田亀治その他の者から買受けた米であつたもので、つまり被告人が原判示第一の十五俵を買受けた値段及び原判示第二の内最初の一石の分を除いた九石二斗を売渡した値段は、それぞれ全く同じであつて、このことに徴すればそれらの米の中には少くとも、値段の差を生ずる程の品質の差のあるものはなかつたものと推認され又被告人が渡辺勝に最初売渡した一石が、その他のものに比して一升につき六円二十五銭安かつたことも、それが、被告人がその米を入手した経緯の差に起因するもので、米の品質としてはそれ程の差がなかつたものであることが推認されるのであつて、本件の米の中に品質の悪いものが多少混じていたとしても、その粗品さの程度は、粗悪でないものに比べて、殆んど遜色のないものであつたことを窺われるものである、果して然らば本件の米はすべて食糧管理法にいうところの米穀に当ることは疑いを容れない。所論は法律の解釈並びに事実の認定につき独自の見解を前提とするもので採用に値しない。論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 蓮見重治 裁判官 細野幸雄)

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